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ヴィエンチャン空港の夜明け 機械資材部 空港プロジェクトチーム 永井 祐紀
海を持たないアジアの小国・ラオス

ラオス人民民主共和国。東南アジアにあるこの国は、中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムの5ヵ国と国境を接し、日本の本州ほどの国土を持つ内陸国だ。人口は600万人ほどで、日本人に良く似た顔のモン族、ヤオ族、アカ族などが暮らす。今後の発展が期待される新興国のひとつである。
1999年、海を持たないラオスは今後の発展を見込み、ラオスの首都・ヴィエンチャンに新国際線ターミナルを開設する。

2001年入社。機械・資材部にて『ヴィエンチャン国際空港』支援プロジェクトに携わり、年数回ラオスに出張している。

10年前から続くラオスへの出資

ヴィエンチャンの空港開設は、国際協力機構(JICA)と日本の政府開発援助(ODA)の支援によって行われたが、彼らは航空・空港系列の会社ではないため、空港運営のノウハウには精通していなかった。そこで彼らは当初、航空会社に協力を募るが、航空会社は空港を使う立場であり、空港運営に関して成熟しているわけではない。また、先の見えないアジアの小国のプロジェクトに賛同する会社はなかなか現れなかった。そんな中、名乗りを挙げたのが、航空業界に精通しているJALUXだった。
JALUXは、ラオス政府やラオス空港公団、また当時ヴィエンチャンで唯一事務所を構える本邦商社だったトーメン(現 豊田通商)などと共同出資し、空港運営会社『LAO-JAPAN AIRPORT TERMINAL SERVICES., Co Ltd.』(以下、L-Jats)を設立。その後も現地にスタッフを配置し、継続的な業務支援や空港設備、特殊車両を通じて空港運営をサポートしている。

国を挙げた一大プロジェクト

今年で10年目となる『ヴィエンチャン国際空港』のプロジェクト。このプロジェクトを現在担当しているのが、JALUX機械・資材部の永井だ。
「JALUXはラオス空港公団、トーメンの2つの組織と『L-Jats』運営に関して1999年から10年の合弁契約を結び、空港運営を行ってきました。2009年は契約更新の年で、私たちにとっては勝負の年だったんです」。
しかし、契約更新は簡単には進まない。既にノウハウは十分に学んだ、契約更新は必要ないと考えるラオス側と、『ヴィエンチャン国際空港』、更にはラオスという国を自分たちの手で更に発展させたいと考えるJALUX。それぞれの思惑が交錯する中、永井はラオスに何度も足を運び、5年の契約更新を成立させた。
「ラオスが小さな国であることと、これまでの空港運営経験もあり、交渉の際には空港公団や航空局の重役、国土交通大臣とも直接話します。責任は重大ですが、こちらの提案も余計なフィルターを通さず聞いてもらえるし、お互いの利害を直接話せるので非常にやりがいがあります」まさに国を挙げた一大プロジェクトである。一国の重鎮たちを前に、永井はどんな話術を展開し、契約更新を成立させたのか。
「契約更新は私たちの損得だけでなく“空港やラオスの発展のために必要”だということを、率直に伝えました。私たちが退けば、他社が空港運営に参入してくる可能性があり、これまで支援してきた『L-Jats』が解散となってしまうことも考えられます。また、JALUXからの増資の準備があることや、新貨物ビルの建設にあたって融資を実施することなど、JALUXが提供する今後の付加価値についても提案しながら、ラオス側にもメリットがあることを十分に説明しました。折角軌道に乗っている体制を、今ここで崩すわけにはいかなかったんです」。空港、そしてラオスのために、と語る永井の姿はラオスの重鎮たちの心を動かした。
「彼らも私たちも、ラオスをもっと発展させたいという気持ちは同じ。真摯に伝えれば、ちゃんと理解してくれます」交渉が成立した要因には、JALUXの10年間の実績と、永井の人柄もあるのだろう。
「ラオスの人たちは無茶を言うことはあっても、意地の悪い駆け引きや人を試そうとすることはまずありません。本当に人が好いんです。日本人と似ているところがありますね」と、穏やかに語る永井。その表情はとても柔和で、ラオスの人々に愛情と信頼感を持っていることが伺える。

更なる進化を見せるヴィエンチャン空港

まだまだ発展途上の『ヴィエンチャン国際空港』。2009年12月には、ラオス初の国際大会となる『SEAゲーム(東南アジア競技大会)』がヴィエンチャンで開催される。『SEAゲーム』は“東南アジアのオリンピック”とも呼ばれるスポーツの祭典で、国内外へ向けて『ヴィエンチャン空港』の存在感を示すには絶好の機会だ。
「『SEAゲーム』の開催期間中に、海外からの観光客が増えるのは確実。必然的に空港利用客も増加します。やはり多くの人に快適に過ごしていただきたいし、良い印象を持ってもらいたい。大会が開催される前に、空港設備を更に整えておきたいですね」。
さらに最近は、駐車場にラオス初となる機械式課金システムを導入しているところだという。
「彼らには自動でお金を払って駐車場を使うという概念がないので、まず、その仕組みを理解してもらうのに時間がかかりました。機械の使い方を教えるのも一苦労。実際にパソコンの動画を見せたり、再三にわたって仕組みを説明することでやっとわかってくれましたね。特に、磁気線式チケットに入場時間や車のタイプの情報が入っている、ということを理解してもらうのには苦労しました。なぜ紙に情報が入っているのかと言われたり…」。
また、より良いサービスを提供するため、毎年『ヴィエンチャン国際空港』の現地カウンタースタッフやグランドスタッフ数名を日本に招き、JALグループ各社で研修を行っている。こうした取り組みによって、JALのホスピタリティが現地スタッフに受け継がれ、空港の更なる進化に繋がっていく。設備とスタッフの両面から、JALUXは『ヴィエンチャン国際空港』をサポートしているのだ。
「空港の経営支援は、航空業界に幅広いネットワークを持ち、数々の空港に携わってきたJALUXにぴったりのビジネス。これまで得てきたノウハウを、他の新興国でも活かしていきたいですね」。

ラオスのまだ見ぬ可能性を求めて

更に永井は、ラオスには空港の他にもビジネスチャンスがあると語った。
「ラオスはまだまだ発展途上の国です。言い方を変えれば何でもできるという可能性にあふれているんです。例えば、西洋式のウエディング。ラオスのウエディングは、日本の神前式のような伝統的なスタイルが主流となっています。そこに我々が入っていくことで、民族衣装ではなくドレスを着るとか、ホテルで披露宴を行うとか……ラオスの人たちに選択肢を与えてあげたい。また、ラオスにはタクシーもほとんど走っておらず、皆トゥクトゥクと呼ばれるバイク式のタクシーを使っています。この運転手たちをタクシー運転手として教育し、豊田通商からトヨタ車を購入して、一緒にタクシー事業を始められないか、とも考えています。多彩な商材を持つJALUXだからこそ、できることがあると思うんです」。空港に止まらず、ラオスの街、更には文化にJALUXが進出する日も近いかもしれない。
「実は、来週もラオス出張なんですよ」と、笑う永井。ラオスにはもう随分と慣れた様子だったが、それでもまだ飽きるということはなさそうだ。
ラオスには、壮大な遺跡や名の知れた観光地があるわけではない。しかしこの国は、新たな商業のフィールドとなる無限の可能性を秘めている。

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