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「航空機部品の保管・在庫管理システム」構築プロジェクト 航空機部品部 企画営業チーム 猪狩直美の挑戦

航空機のエンジン用部品を扱う部署

猪狩直美

航空機に関するあらゆる部品の調達・販売を行う航空機部品部 企画営業チーム。その主力商品となるのが、中型旅客機に搭載される「V2500エンジン」をはじめとした旅客機用エンジン部品だ。
企画営業チームでは、旅客機エンジンの製造・修理・メンテナンスを行う国内重工会社からの依頼を受けて、米国現地法人となる「JALUX AMERICAS, Inc.」を経由、米国内エンジン部品製造工場から必要な部品を調達している。

通常、エンジンの修理は分解・洗浄の工程を経て、使える部品と交換を要する部品を選別していく。その後、必要な部品を注文するため、部品到着まで作業がストップしてしまう。納品までに1週間前後かかってしまう従来の業務フローでは作業効率が悪く、重工会社では、使用頻度の高い部品を自社でストックせざるを得ない状況だった。

お客様の要望を形にした、新しいシステム

しかし、航空機用エンジン部品は非常に高額な商品。中には1千万、2千万円相当のものまであるという。ビスやネジのように気軽に在庫量を増やすわけにはいかない。取引先である重工会社からは、在庫圧縮を目的とした納期短縮への強い要望があった。

「商社としての付加価値を高め、お客様により良いサービスを提供したい」という思いから企画営業チームでは、タイムリーな部品供給システムの構築を模索する。その答えとして導き出されたのが『JIT倉庫システム』だ。JITとは、Just In Timeの略で、必要な部品をすぐに供給するという意味を持つ。発注を受けてから部品の手配を行っていた従来の方式から、JALUXが直接部品をストックする『JIT倉庫システム』への移行により、翌日納品が可能になるという。エンジンの修理・メンテナンスに要していた時間を大幅に短縮できるうえ、部品を一括購入することでのコストダウンをも実現する。お客様である重工会社をはじめとして、関係する会社すべてが“得”をする、まさに究極とも言える夢のプロジェクトが始動した。

  • 部品倉庫1
  • 航空機部品
  • 部品倉庫2

ノウハウがない中でのシステムづくり

プロジェクト着手にあたっての最大の課題は在庫管理の効率化だった。が、これまで注文を受けてから部品の手配を行っていた企画営業チームに在庫管理のノウハウはない。「これで間違いはないのか?」…自問自答を繰り返しながら、ひとつひとつ手探りで仕事を進めていくしかなかった。そんな中、最強のブレーンとなってくれたのが得意先の担当者だったという。お客様も巻き込んでの大掛かりなプロジェクト。失敗は絶対に許されない。綿密な在庫シミュレーションを重ねる一方で、部品の輸送を担当するフォワーダー(運送会社)や在庫管理を任せる倉庫会社といった協力会社の選定がはじまる。

プロジェクト成功のカギをにぎるとも言える協力会社選定を任されたのは、意外にも入社1年目の猪狩直美。当時を振り返り、彼女はこう話す。「社会人としての経験もまだまだ浅く、ましてや航空機部品に関する知識など皆無に等しかった当時の私にとって、協力会社選定という大役を任されたことは、うれしさよりもプレッシャーのほうが大きかったですね」。そんな猪狩の支えとなったのが、「とにかく頑張れ。失敗してもいいから、自分の好きなようにやってみなさい。責任は私がとるから」という上司のひと言だったという。「おかげで失敗を恐れず、おもいきってチャレンジすることができました」と語る猪狩は、数あるフォワーダーや倉庫会社の中から、条件に合いそうな数社をピックアップしたのち合同説明会を開催。それぞれの会社から業務効率化のアイディアを募るという大胆な方法で選定をすすめた。

従来の流れと新しい流れ

部品が入荷しない!?トラブル続出の船出

約5ヶ月間の準備期間を経て、2004年5月『JIT倉庫システム』は稼動した。しかし、予想もしていなかったトラブルが次々と発生することとなる。

部品倉庫3

まず、米国の部品製造会社から期日を過ぎても約束の部品が納入されない。せっかくシステムを構築しても、在庫がなければお客様に供給することはできない。メンバーに緊張が走った。再三の督促により初期在庫が揃うものの、将来に対する大きな不安が残った。よくよく原因を調べてみると、急を要する納品先を優先していることが判明した。航空機のエンジン部品には高度な安全性が求められるため、特別な認可を受けた工場でしか生産できない。そのため、需要の高い部品は世界規模での争奪合戦が起こりやすいのだ。そうした状況にあって“在庫品”としての発注は、どうしても後回しにさせてしまうのだという。さらに、入荷した部品を検品してみると異部品(部品番号違いの部品)納入や数量過不足納入などの不具合が多数発生。部品製造会社へのクレーム提起や返品・代品手配などの処理に追われた。

猪狩直美

またあるときは、輸送中のトラブルも発生した。「やっと部品が届いたと思ったら、箱に大きな穴があいていて…。当然、商品にも大きなキズがついていました。高額な商品なだけに、このときは焦りましたね」。この問題は大至急で改善しなければ、今後も発生する可能性がある。猪狩は、クッション材の増量や梱包用のダンボール強化を部品製造会社へ要求。「よく調べてみると簡単な梱包だったので、より頑丈なものに変更してもらうようにしました」。

幾多のトラブルはあったものの、システム自体はお客様から高評価を受けた。特に現場からは「在庫状況がひと目でわかる」「最短1日で納品されるのはありがたい」などの喜びの声が多く届いたという。
さまざまな苦労を乗り越えた結果、『JIT倉庫システム』導入初年度の売上は前年比の2倍に。お客様が待ち望んでいたシステムであることが証明された。

チーム一丸となって勝ち取った受賞

猪狩直美

この功績を称え、2005年3月、猪狩は入社3年目までの社員を対象とするベストルーキー賞を受賞する。新入社員とはいえ、責任ある仕事を任され、最後までやり遂げた点が評価されたのだ。当時の心境を、彼女はこう話す。「受賞の話を聞いたときは、正直驚きました。新しいビジネスモデルを構築したという点で、チームでの受賞はあるかなと思っていましたが、私個人が貰えるとは思ってもいなかったので。もちろん、嬉しいと思いましたよ。でも、チームでやった仕事なのに個人で貰ってしまって悪いなという気持ちも強くありました」。

さらに翌年、「JIT倉庫システム」導入が収支に貢献した事もあり、所属する航空機部品部がベストプロフィット部門賞を受賞。このときは、ベストルーキー賞の受賞以上に嬉しかったと猪狩は言う。チームで協力して作り上げる大切さ、達成感を肌で経験したからこその喜びなのだろう。

ここに商社としての新たな可能性を示したひとつのプロジェクトが完結する。しかし、それは『JIT倉庫システム』の完成と同義ではない。猛烈なスピードで技術革新がすすむ航空機業界にあって、在庫部品の管理は驚くほど難しい。より精度の高いシステムを目指した企画営業チームの努力は今も続いているのだ。

JALUXにとって、新たなビジネスモデルとなった保管・供給システム。まだまだ発展途上だが、今後も大きな役割を担っていくに違いない。

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