JALUXの挑戦

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航空事業関連プロジェクト BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト 客室用品部企画営業チーム坪田義治・元田賢太郎の活躍

JALUX全社員を対象に、顕著な業績向上もしくは将来の事業展開に貢献した個人またはチームに与えられる『Seasonal MVP』。
2006年度の『Seasonal MVP/Winter』に輝いたのは、客室用品部企画営業チームに所属する総括マネージャーの坪田義治と入社2年目の元田賢太郎だった。ここでは、仕事に対する情熱を武器に、数々の困難を乗り越えた元田とその上司である坪田の活躍を通して、新たなビジネスモデルとなった『BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト』について紹介していこう。

坪田義治
坪田義治
元田賢太郎
元田賢太郎

6ヵ月におよぶ挑戦のはじまり。

ジェットフェリー

「ジェットフォイルに、21世紀にふさわしいデラックスシートを設置したい」。2006年夏、客室用品部企画営業チームに所属する元田が受けたこのひと言が、以後6ヵ月におよぶ挑戦の日々の幕開けとなった。
当時の元田は、客室用品部が拡販に力を入れるAED(自動体外式除細動器)の契約獲得を目指し、九州地区を奔走する日々を送っていた。得意先からの紹介でJR九州高速船株式会社との商談機会を得たときも、アタマにはAEDの売り込み以外なかったという。ところが商談の最中、先方担当者の口から出た言葉は「JALのクラスJで培った航空機用高級シートのノウハウを活かして、グリーン席用のシートを作れないだろうか」というものだった。九州新幹線の全線開通。さらにはソウル新幹線の開通に向けて、博多〜釜山間を結ぶジェットフォイル『BEETLE』のイメージアップ戦略の一環としてのシート改革。その実現のためには、JALの航空機部品調達を一手に担うJALUXの協力が不可欠だという。ありがたい話には違いないが、もちろん会社としては航空機部品部にてJAL機へのシート搭載のノウハウ・実績はあるものの、船舶向け実績は無く、またホテル向け客室用品等の企画・調達が主業務である元田には当然そのノウハウは無かった。それでも元田は受注したいと思った。所属する客室用品部、及び航空機部品部のサポートがあれば大丈夫だろう。そして何より自社の企業理念にある“Challenge & Change- Yes, we can”の精神で。ただし、納期まではわずかに4ヵ月しかないという。

一人の男の呼びかけにプロ集団が立ち上がった。

通常、シートの製造は、設計、デザイン、試作シート作製、乗り心地の検証、そして製造という工程を経る。その期間はおよそ1年。元田がこの事実を知るのは、ドイツの老舗シートメーカー『レカロ』の日本法人『レカロジャパン』に開発協力依頼を持ちかけたときだった。「当初、4ヵ月もあれば十分だと思っていました。私たちが普段扱っている商品は90日もあれば納品できるものばかり。同じような感覚でいたんです」。

企画打ち合わせ

製造期間が通常の3分の1しかない。「大変なことになった」…これが、元田の、そしてレカロジャパン技術者の共通の思いだったに違いない。しかしレカロジャパンは、一見不可能とも思える依頼を何とか引き受ける。元田の人柄と「絶対にこのプロジェクトを受注し、成功させる!」という熱意に共感したからだという。
JALUX、レカロジャパン、そしてシートのデザインを担当する『ドーンデザイン研究所』を中心とした協力体制のもと、『BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト』がスタートした。

BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト

プロジェクトを成功に導く2つのカギ。

元田

プロジェクトのスタートに先立ち、坪田のアドバイスにより、元田が引いたスケジュールは、最初の2ヵ月間で設計・デザインを経て、シートの仕様を決定。3ヵ月目に試作シートを作って機能を検証。最後のひと月でシートを生産するというものだった。その中で、のり越えるべき大きな課題は2つ。「納期」とプロジェクトの中心になるべき元田の「シートに関する絶対的知識不足」だ。まず納期。仕様決定までには2ヶ月しか時間が無い為に、レカロ社サイドの既存パーツ等をベースに、それを流用・加工することで時間の短縮を図った。しかし、もちろん本件における関連部署のサポートは継続してあったものの、シートに関する基本用語すら分からない元田の経験不足は、一朝一夕でどうにかなるものではない。先ずは関連書籍を読みまくった。打ち合わせ中に出たわからない単語はその場でメモ。帰社後、インターネットや書籍を駆使して調べる毎日。航空機部品部の先輩をつかまえて質問攻めにすることもしばしばだったという。当時を振り返り元田は語る。「シートについて何一つ分かっていなかった私にとって、先輩方のサポートは非常にありがたく、また今回の案件に関わった全社の協力なしに、プロジェクトの成功はあり得ませんでした」。

妥協を許さぬ厳しい目が夢のシートを作り上げる。

シートの設計は順調に進んだかに見えた。しかしこの時、元田は思わぬ落とし穴に陥る。何度仕様書を書き直しても、シートのデザインを担当するドーンデザイン研究所からOKが得られなかったのだ。同所の代表を務める水戸岡鋭治氏は、新幹線「つばめ」をはじめ、特急電車、駅など、JR九州グループ全体のデザインを担当する工業デザイン界の巨匠。リクライニングの角度や簡易テーブルの位置に、ミリ単位での修正指示が入る。それは、ただ単純に“シートを利用するお客様のために”という思い。妥協を許さぬ彼の目に、元田は仕事のきびしさとシート作りのむずかしさを実感したという。度重なる仕様の変更。深夜まで続く打ち合わせ。光明を見出せないまま時間だけが経過した。元田からの現状報告を受けていた坪田は当時を振り返りこう語る。「仕様決定が1週間ずつずれ込んでいく。デットラインが決まっているだけに、歯がゆかったですね。もし期日までに納品できなかったら会社としての責任問題に発展しかねない。役員も非常に心配していました」。予定から遅れること数週間、ようやく仕様にOKが出た。早速、試作シートを作製。できあがった試作シートに身をしずめたとき、元田は知る。この数週間が決して無駄ではなかったことを。そこには確かに、21世紀にふさわしいデラックスシートがあった。

  • シート
  • シート
  • シート

その後、急ピッチでの生産がはじまった。特に最後の3日間は、文字通り徹夜での作業となった。12月9日、初回納品分のシートを積んだトラックが工場を出発したとの報告を受けた元田は、納品先の伊万里で待機。「無事にシートが届いたときは感動しましたね。今までの苦労が報われた。そんな気持ちでいっぱいでした」。しかし、仕事はまだ終わってはいない。喜びに奮える元田の心に、ひとつの懸念が影を落としていた。

最後の難関となったクリスマス前の攻防。

「最後の難関、それはJR九州高速船様との価格交渉でした」。度重なる仕様変更により、開発製造コストが当初の予定よりも大幅にアップしていたのだ。事前に提出していた見積書の金額をはるかに越える請求書。それを受理してもらうのは、並大抵のことではない。坪田の同席を求めての価格交渉は難航をきわめた。しかし、会社としての利益を出さなければ、それは「仕事」とはいえない。“素晴らしいシートが完成した”“なんとか納期に間に合った”という努力の結晶を無価値なものにしたくない…そんな思いを支えにしながら、元田は必死の交渉を続けた。「先方はシート作りについて豊富な経験をお持ちです。金額に対しての疑問や質問も、実体験に基づくシビアなものばかりでした」。ひとつひとつの疑問や質問に対して、金額の妥当性を細かく説明していく。永遠とも感じられる緊迫した時間の中で、ついに両者は着地点を見つけることが出来た。それは年末も押し迫った12月21日のことだった。「お互いいいクリスマスが迎えられるね」という先方の言葉をもって、『BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト』は山場を越えた。

  • シート完成
  • シート完成

MVPの受賞…それは次なる飛躍への第一歩。

年も改まった2007年2月、元田のもとに一通の社内通知が届いた。それは将来の事業展開に大きく貢献した社員に贈られる『Seasonal MVP』の受賞連絡だった。理由は『BEETLEグリーン席特別シート納入プロジェクト』を通して、既存事業の転用・複合による新しいビジネスモデルを構築した功績によるもの。「受賞を知ったときのよろこびは一生忘れられません。苦労が大きかった分、本当にうれしかった。いろいろな意味で今回のプロジェクトは、私にとっての転機になったと思います。JR九州高速船の社長様をはじめ、ドーンデザイン研究所の水戸岡先生、レカロジャパン開発陣の皆様など、普段お目にかかることの出来ない素晴らしい方々から教わったものは数えきれない。また、最後までサポートしてくれた客室用品部・航空機部品部の先輩方や駆け出しの私を信頼して大きな仕事をまかせてくれた坪田総括マネージャーに対しても感謝の気持ちでいっぱいです」。
“Challenge & Change- Yes, we can”の精神でつかんだビジネスチャンス。さまざまな経験を積み営業マンとして大きく成長した元田の躍進はここからはじまる。

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